天外伺朗さんの「ティール時代の子育ての秘密」を読んだ。
ティールという言葉、ここ数年でビジネスの世界ではだんだん知名度が高まってきたように思います。
しかし、そこに「子育て」が関係してくるというのは意外であり、とても興味を持ちました。
通常、「ティール組織」といったような経営論として語られることが多いからです。
天外伺朗さんの本はフロー理論に関する本をこれまで何冊か読んだことがありました。
本書は久しぶりに読む天外さんの本でした。
そんな、「ティール時代の子育ての秘密」を読んで、学んだことや感じたことをまとめてみました。
目次
ティール組織とは何なのか?
企業経営の世界で最近聞かれるようになった「ティール」という言葉。
ティール組織の本も何冊も出版されています。
トップや管理職が管理していくのではなく、細かい管理をしなくても自発的にチームが動きプロジェクトが進んでいくような組織がティール組織の代表的な姿でしょうか。
細かい定義はいろいろありますし、「これがティール組織!」といえるようなロールモデルは、まだ確立しきっていないところも多いです。
しかし、会社の働き方はこの「ティール組織」のような形に徐々に変わっていくであろうことは予想できます。
つまり、私たちの子供世代であれば、このティール組織で働いていくことになる可能性が高いのです。
そして、そのティール組織の考え方に順応できるような育て方をしないと、親の価値観で育てていたら、新しい価値観に対応できずに苦労するかもしれません。
では「ティール時代の子育てってどうするの?」に対する回答が、本書の中で語られているところなのです。
ティール時代に対応する子育ての最大のコツ
まず、自分自身が育つこと。
それが、子育ての最大のコツであると本書の冒頭で述べられています。
「子供が言うことを聞かない!」
ってことは、子育てをしていたらよくあると思います。
でも、そもそも子供は言うことを聞かないもの。
「言うことを聞かなかったら喜ぶ」くらいでちょうどいいと本書にはあります。
だから、子供のことをどうこする前に、まずは自分の内面をしっかり見つめること。
そして、自分自身が育っていくことが、良い子育てに繋がるというのです。
「育児は育自」
とも書かれていました。
だから、一生懸命子育て本を読んで実践しようとしても、自分自身が成長しなければあまり意味がないってことですね。
たしかにそうかもしれない・・・
子育てとフロー
天外伺朗さんの得意分野である「フロー」の話も出てきます。
指示命令や強制がない完全な自由が与えられると、一つの作業に集中する「フロー」に入ることがあります。
これは、大人はもちろん、子供も「フロー」の状態にはなるそうです。
「フロー」が妨げられずに作業が完遂できると、子供は深い満足感が得られ、態度が劇的に変わるのだそうです。
逆に子供に指示や命令をする、間違いを訂正する、褒めるといったことは「フロー」を妨害するというのです。
指示や命令・間違いを訂正するならまだしも、褒めるのも「フロー」を妨害するというのは意外でした。
なぜ、褒めると「フロー」が妨害されるのか?
褒めることをモチベーションにしてしまうと「褒められるからやる」「褒められなかったらやらない」ということになってしまう。
少しむずかしい言葉で言うと、「内発的動機」がなくなってしまうのです。
内発的動機とは、なにかの目的のために行動するのではなく、心の内面から純粋にやりたいと思ったことを行動に起こすことをいいます。
心の底からこみあげてくる「ワクワク感」があるからこそ、フローに入ることができるのです。
何かを得ようと思って行動するのは「外発的動機」によるものであり、それだと「フロー」には入りにくいのです。
しかし「褒める」ことはフローに入ることは妨げるものの、「自己否定感」から助ける働きはあるようです。
「自己否定感」が強い人はフローどころではありません。
まず、現状からすくい上げる必要があり、そのときには「褒める」ことが効果的なのだそうです。
その見極めが大切なことなんですね。
印象に残った2つのワーク
数は少ないですが、本書の中には具体的なワークも示されています。
ワークは本書の中でも特に印象に残った箇所です。
「お子さんが育つ魔法のマントラ」
と
「親殺しの瞑想」
の2つが、具体的にやるべきことを形にしてあるワークになっています。
どのようにやるのかは、気になる方はぜひ本書を読んでみてください。
「魔法のマントラ」は、毎日これを唱えているとお子さんが順調に光り輝いて育つという、まさに魔法のようなものです。
「本当に?」
と思うのも無理ありませんが、やってみる価値はおおいにあると感じました。
「親殺しの瞑想」は、本当に親を殺すわけではありません。
親子の葛藤を消すための瞑想であり、自分と親の葛藤がなくなることが、子育てにも良い影響を与えるということで紹介されていたワークです。
どちらのワークも、毎日繰り返す面倒なものではあるのですが、やってみるだけの価値はあるそうな内容だと感じました。
子育ては小手先だけではダメ
良い子育てをするにはどうすればいいか?
子供がいる人にとっては、とても興味を惹かれるテーマだと思います。
私も5歳児の息子がいるので、興味を持ってよく読んでしまいます。
しかし、本書は結局は小手先のテクニックでは子育てをする上であまり意味がないということを伝えている気がします。
自分自身が育つこと。
そして、子供が自発的に行動したいと思う気持ちを大切にして必要以上の介入はしない。
この基本姿勢が、ティール時代に対応できる子供を育てる土台になるのではと感じました。