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幸せになる勇気 岸見一郎・古賀史健著【感想】

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

「嫌われる勇気」の感想を書いて以来、1ヶ月も感想を書くのに時間がかかってしまいました。凄いなと思える一方で、何から話したらいいだろう?と思えてくる1冊でもあり、なんともまとめることに苦労しています。

  

「幸せになる勇気」は、前作「嫌われる勇気」以上に、深いテーマだったように思えます。前作に引き続いての対話形式で分かりやすい1冊なので、一読してなんとなくわかった気になってしまいますが、これを実践していくのは決して簡単なことではない気がします。

 

世界はシンプルであり、人生もまた同じである。しかし、「シンプルであり続けることはむずかしい」と本書の最後に語られています。まさに、そうなんだろうなと思います。

  

幸せになる勇気【目次】

 

第一部・・・悪いあの人、かわいそうなわたし

 

第二部・・・なぜ「賞罰」を否定するのか

 

第三部・・・競争原理から協力原理へ

 

第四部・・・与えよ、さらば与えられん

 

第五部・・・愛する人生を選べ

 

目次を書いてみましたが、これだけ見てもよくわからない気がしますね。

  

前作「嫌われる勇気」に出てきた青年と哲人の会話が、再び今作でも展開されていきます。「嫌われる勇気」が出版されたのは2013年ですが、「幸せになる勇気」が出版されたのは2016年。現実と同じ時間の流れ方でそこが妙にリアルですね。

 

アドラー心理学を「嫌われない勇気」で知って、その斬新な考え方に「なんか良いかも!」と好感を持ちつつも、実際にやってみると「何から始めていいか分からない」「やってみたけど、うまくできている気がしない。」

 

そういう人たちにヒントをくれる1冊ではと思いました。ちなみに、前作「嫌われない勇気」を読んでいなかったり、読んだけど内容を忘れてしまっているという場合でも、無理なく読めるわかりやすさになっています。ことあるごとに、前作に出てきたことの復習も書かれています。 

 

かなり多岐にわたるテーマが語られている本書ですが、特に興味を持った3点を挙げます。

 

1、幸せになれない理由

 

「幸せですか?」と聞かれて、心から「幸せです!」と言えない人もいるかもしれません。

私も、まあ幸せだとは思うけど、もっと上があるんじゃないかとも感じてしまいます。

 

本書では「幸せになれない理由」を【仕事、交友、愛の3つからなる「人生のタスク」を回避しているから】だと言います。

 

仕事というのは、私の幸せを突き詰めていくことが、結局は他人の幸せにもつながるというギブアンドテイクに近い発想ですが、それも人間には必要だということです。

 

2、交友のタスクと教育

  

特に、普通の考え方と違った感覚だなと感じるのが「交友のタスク」です。交友というと、友達同士みたいなイメージが感じられる気がしますが、本書での「交友」はちょっと違います。

 

交友のタスクとは「あなたの幸せ」にフォーカスすること。相手に対して担保や見返りを求めることなく無条件に信頼を寄せていく。『与えよ、されば与えられん。』という言葉も出てきました。

 

そして、教育とは「交友のタスク」なのだそうです。

 

褒めたり叱ったりというのが教育には必要な気がしますが、アドラー心理学では褒めることも叱ることも否定します。

 

落とし込むところが、なかなか難しいと感じたところではありますが、興味深い考え方です。

 

3、アドラー心理学における愛

 

仕事のタスクはギブアンドテイク。交友のタスクは無条件に相手を信頼すること。

では、「愛のタスク」は?

 

愛のタスクは主語を「わたし」から「わたしたち」に変えること。

「わたしたち」は、やがて共同体全体に、そして人類全体にまでその範囲を広げていく。それが共同体感覚である。

 

「運命の人は、いない」「愛とは「決断」である」など、結構厳しいなと思えてくるかもしれないことが、「愛のタスク」をテーマにした会話ではいくつも出てきます。

 

 

アドラー心理学というのは、本当に深い学問なので、1冊や2冊を読んだくらいで、全部理解して実践できるわけがないよなと、改めて感じます(笑)

とはいえ、「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」の2冊を通して、アドラー心理学のエッセンスはかなり多く学ぶことができ、その1つ1つを生活の中で実践していくことで、素晴らしいと思える人生に近づける気がします。

 

ユングの分析によると、アドラーは「内向的」な人なんだそうです。

だからこそ、「すべての悩みは対人関係の悩み」というアドラー心理学の説を思いついたのかもしれません。

 

私自身、内向が強い人間なので、アドラーの考えは大いに共感できるところがあり、実践するに値する生き方であると感じました。 

ことあるごとに、アドラー心理学の書籍は読み返し、1つ1つを人生の中で実践しながら「人生のタスク」に向き合っていきます。

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII
幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII