2013年に発売されて大ベストセラーとなった「嫌われる勇気」。
多くの自己啓発にも影響を与えていると言われている「アドラー心理学」について、分かりやすくまとめた1冊。今さらながらですが、まだ感想を書いていなかったので、まとめてみます。
青年と哲人の会話のみで話が進んでいくのですが、この青年がなかなかの曲者で、なんだこいつわって感じの極端なキャラクターで面白い。「アドラー心理学なんて絶対認めないぞ」って勢いでの会話が極端なんだけど、そのくらいアドラー心理学というのが、常識離れした変わった考え方であることを、読者に印象付けています。
どういうところが変わっているのかというと、
・トラウマは存在しない
・すべての悩みは「対人関係の悩み」である
・承認欲求を否定する
・叱ってはいけない、ほめてもいけない
などの項目は、「そうなの?」と人によっては思わず否定したくなりそうです。そのあたりの詳細は気になったら読んでほしいのですが、個人的に気になったところは以下の3点。
・原因があって結果があるわけではない
「原因論」ではなく「目的論」で考えるのが「嫌われる勇気」に出てくるアドラー心理学の大きな視点です。
普通、何かが起きたら、その起きたことに関する原因を探りたくなります。ですが、アドラー心理学では、結果を引き起こす原因があるのではなく、「目的」を達成するために原因と結果を創り出すと考えます。
「小説を書いて賞に応募したいけど、仕事があって時間がないから書けない」というのは、普通の原因と結果の考え方ですが、アドラー心理学の目的論で言うと、「小説を書いて賞に応募してしまうと、落選して能力の無さに直面してしまうから、それを避けるために仕事で時間がないから書けないという原因と結果を創り出している」と考えます。
そう考えてみると、起きている結果とそれを引き起こしている原因は、まったく違う目的を自分が持っていて、その目的を達成するために今の行動をして、今の結果を引き起こしているのかもしれないと思えてきます。
・承認欲求の否定
アドラー心理学では承認欲求を否定します。
この承認欲求を否定するというのは、ちょっとニュアンスが違う気がしました。
やはり、人間には承認欲求はあるように思います。
ですが、注意しないといけないのは、その承認欲求に振り回されてしまう人がとても多いところです。承認されること、褒められることが嬉しいのはOK。でも、そこで「褒められるからやる」「褒められなかったらやらない」みたいに、目的が「褒められること」にすり替わってしまう可能性がある。
そういう意味で、相手の期待に応えてばかりの人生は、自分の人生を生きているとは言えず、承認欲求に振り回されていると言えます。
承認欲求があることは認めた上で、承認されるされないに関わらず、自分が自由に選択した行動をとる勇気を持つと、自分の人生を生きられるのかなと感じました。
それはまさに、タイトル通り「嫌われる勇気」が必要になる行動かもしれません。
・「いま、ここ」に生きる
「いま、ここ」というキーワードは最近良く聞くキーワードですが、アドラー心理学でよく使われているキーワードのようです。
過去を振り返って、そこにとらわれたり、起こっていない未来を不安に感じたり心配したりすることで、今の行動に悪影響を与えるのだとしたら、そんなことに意味はない。
今、できることをやるしかない。「嫌われる勇気」を通してアドラー心理学に触れてみると、これは根性論なんじゃないか?と感じられることがありました。それは、登場する青年も似たようなことを感じていたようです。
そうかもしれないし、そう考えることができたら楽なんだけど、そう考えられないから困るんだよね。ってこともありそうな気がします。
かといって、そんなの机上の空論だと捨ててしまうには惜しいような気がしてくる、そんな不思議な魅力を持っているのがアドラー心理学だなと感じました。
このあと続編となる「幸せになる勇気」も読んでみたのですが、こちらはいっそう実践的なヒントが書かれていたので、またそちらはそちらでまとめます。
「嫌われる勇気」が地図であり、「幸せになる勇気」がコンパスのような役割をイメージして書いたもののようです。
そういう意味で、「嫌われる勇気」を読んで、アドラー心理学って面白いけど、具体的にこれから何をやってみよう・・・
と思った場合は「幸せになる勇気」と合わせて読んでみると、いっそう理解も深まって、行動にも落とし込みやすくなってきそうです。
まずは、「こういう考え方がある」ということを知識として知り、その考え方が自分の行動に影響を与えていたことを知るだけでも、その上でどうしたらいいかを考えるヒントになると思いました。